令和6年度税制改正において実施が決まった、所得税と個人住民税の定額減税について

新入社員を迎えるときの税務

 

1.      扶養控除等(異動)申告書の記入

入社の際に、令和6年分の扶養控除等(異動)申告書について記入をしてもらったのち、回収。

この申告書にはマイナンバーの記載欄があることから、マイナンバーの取得手続きを実施。

事業者がマイナンバーに関する専用の台帳を作成して保管している場合には、

扶養控除等(異動)申告書への番号記載を省略することが可能。

2.      前職の源泉徴収票の入手

本年1月から入社までの間に前職の給与がある新入社員については、

前職勤務先から交付される源泉徴収票を本人経由で入手。

3.      住民税の給与所得者異動届出書

前職勤務先がある新入社員について、

住民税の特別徴収(給与天引き)の引継ぎの手続きを依頼される場合、

本年1月以降に退職した人に未徴収の税額がある場合には、

前職勤務先で一括徴収が義務づけられている。

 

能登半島地震を受けた国税の申告期限等延長措置

 

国税庁は、11日に発生した能登半島地震に係る国税の申告・納付等の期限延長について官報に告示。

 

申告期限等の延長の対象地域としては石川県及び富山県としたうえで、

両県に納税地のある納税者について、

国税に関する申告・申請・請求・届出といった書類の提出と納付等に関する期限を延長する(地域指定)との内容。

 

こうした申告期限等の延長措置が公表されたことにより、両県ではすべての税目について、

令和611日以降に到来する国税の申告・納付等が、所轄の税務署に申請をしなくても自動的に延長。

 

延長の対象としては、たとえば毎月10日が納付期限である源泉所得税等についても期限が延長

 

同庁では、申告・納付等の期限をいつまで延長するかについて、

「今後、被災者の状況に十分配慮しつつ検討。

 

また、石川県・富山県以外に納税地がある納税者であっても、

今回の能登半島地震により被災し、申告・納付等をすることができない場合には、

所轄の税務署に申請することにより申告・納付等の期限の延長を受けることができる。

 

こうした申請は、当初の期限を経過し状況が落ち着いた後に、

申告・納付等と同時にその手続きを行なうことも可能。

 

国税庁ホームページ令和6年能登半島地震により被害を受けた方へ

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/noto/pdf/0024001-056.pdf

 

交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に関する税制改正

 

1.      令和6年度税制改正の概要

 

法人の交際費等の支出に係る損金不算入制度について、

交際費等の支出の範囲から除外される飲食費の金額基準を

1人当たり1万円以下(現行:5000円以下)」に引き上げ。

 

物価高騰による飲食代の値上げに対応した措置であり、

令和641日以後に支出する飲食費に適用。

 

2.      一定の事項を記載した書類の保存とは?

 

「交際費等の支出の範囲から除外される飲食費」とされるためには、

以下に掲示する、一定の事項を記載した書類を保存することが必要。

     飲食等のあった年月日

     飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称及びその関係

     飲食等に参加した者の数

     飲食費の額並びに飲食店、料理店等の名称及びその所在地

     その他飲食費であることを明らにするために必要な事項

 

3.      その他の交際費等の損金不算入制度の特例については変更なし

 

令和6年度税制改正法では、

「接待飲食費の50%損金算入特例」と「中小企業の定額控除限度額(800万円)の特例」の適用期限について、

令和93月末まで3年間の延長をすることも示されており、従来の特例措置が継続。

 

定額減税の概要と源泉徴収の方法

 

企業の賃上げを促す税制の強化とともに、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、

デフレマインドの払拭と景気の好循環につなげることを目的に、

令和6年の所得税と個人住民税について定額減税を実施することが盛り込まれた。

 

この定額減税は、

所得税や個人住民税の源泉徴収を実施する事業者が主体となってかかわる側面があり、

また定額減税の実施は本年6月以降のそれらの源泉徴収から実施することとされていることから、

各事業者において、給与ソフトのバージョンアップも含めた早急な準備が求められる。

 

国税庁や総務省が公表している情報をもとに、事業者における定額減税の実施方法等について

 

1.      定額減税の概要

所得税と個人住民税の定額減税の内容は、

納税者および配偶者を含めた扶養親族(合計所得金額48万円以下)人につき、

令和6年分の所得税で3万円の減税(特別控除)を、

令和6年度分の個人住民税所得割の額から1万円の減税(同控除)をそれぞれ行なう。

 

控除の順番としては、住宅ローン減税などの税額控除がなされた後の所得税等から減税をする。

 

所得税であれば、

定額減税の合計額がその者の所得税額を超える場合には所得税額を限度とするとしたうえで、

税額が定額減税分よりも少なく減税しきれない者に対しては、

住宅ローン減税などの適用者も含めて差額を給付する方針が示されている。

 

ただ、合計所得金額が1805万円超(給与収入2000万円超に相当)の者は、

所得制限があることにより定額減税の対象から除外。

 

所得税の最終的な税額は、

年間の収人額等が確定する年末になって確定するので、

今回の減税は最終的には確定申告での対応となるものの、

給与所得者のように、それ以前に納税の機会がある場合には、

令和66月以降、実務上可能な限り早い機会を通じて減税を行なう。

 

具体的には、

給与所得者に対しては、定額減税の開始前に実務上利用可能な扶養親族等の情報に基づいて

源泉徴収税額から控除する所得税額を決定し、

賞与を含む給与収入について主たる給与支払者の6月の源泉徴収税額から減税を実施。

 

6月に引ききれなかった額は7月以降に順次控除。

 

年末までに扶養親族等の情報に異動があった場合には、

年末調整または確定申告でその対応をする。

 

住民税においては、

令和66月分は特別徴収を行なわず、

定額減税後の税額を令和67月分から令和75月分の11ヵ月で徴収する。

 

2.      源泉徴収義務者向けの情報が公表された

 

定額減税は

去る3月末の通常国会においてその法案が成立しましたが、

それに先行する形で

「令和6年分所得税の定額減税の給与収入に係る源泉徴収税額からの控除について」が

財務省と国税庁から、

また「給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた」

「令和6年分所得税の定額減税Q&A」が国税庁から、

「個人住民税の定額減税()に係るQ&A」が総務省から、それぞれ公表。

 

そのうちの

「令和6年分所得税の定額減税の給与収入に係る源泉徴収税額からの控除について」は、

所得税の源泉徴収義務者向けの実施要領案となっていて、

①令和6年分所得税の定額減税の概要(対象者等)

②源泉徴収税額からの控除の実施者、

③源泉徴収税額からの控除の実施方法、

④源泉徴収票等の記載事項、⑤その他、に分けて説明。

 

たとえば

前述の③の説明において、

令和661日より後に雇用されて扶養控除等申告書を提出した者については

定額減税の額について年末調整時に控除することとし、各給与等支払時にその控除は行なわないこと、

⑤の説明においては、令和661日より前に退職をしている場合には

源泉徴収による対応は不要とすることが示されている。

 

同じく⑤の説明では、

源泉徴収した所得税および復興特別所得税を納付する場合、

所得税徴収高計算書には定額減税控除後の源泉徴収税額を記載する。

 

なお、定額減税の実施に際して、

源泉徴収票や所得税徴収高計算書(納付書)の様式改訂は予定していない。

④の説明においては、

主たる給与等の支払者が令和6年分の年末調整をして作成する源泉徴収票の摘要欄の記載事項として、

①所得税の定額減税控除済額と控除をしきれなかった額、

②合計所得金額が1000万円超である居住者の同一生計配偶者(控除対象配偶者でない配偶者)分の特別控除を

実施した場合はその旨を記載することとし、その記載例も示されている。

このほか、

令和661日以後に交付をする給与明細等への記載事項について、

給与明細等に係る控除前源泉徴収税額から控除をした定額減税の控除済額に関する記載例が紹介。

 

事業者が交付をする給与明細等の様式に定額減税に関する記載ができない場合には、

別紙等の添付による交付も可能。

 

なお、

年末調整において定額減税の控除をした場合の給与明細等には、

源泉徴収票で減税額を把握することが可能であるため、定額減税の控除済額の記載は必要ない。 

 

国税庁ホームページ定額減税特設サイト 

https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm