定時株主総会の実務等について

定時株主総会の実務

 

1     剰余金の分配と所得税の源泉徴収

 

定時株主総会の決算承認の中で剰余金の分配決議がされた場合は、株主に対して配当金の支払いを行なう。

 

配当金の支払いの際には、源泉所得税の徴収。

(非上場株式の配当にともなう源泉徴収は、復興特別所得税とあわせて一律国税2042%の税率)

源泉徴収をした金額は、配当金支払月の翌月10日までに納税。

 

改選期を迎える役員の選任

 

定時株主総会では、

改選期を迎えた役員(取締役や監査役)の選任。

重任(同じ人物が改選後の役員に就任すること)であっても改選の決議は必要。

 

役員の改選が取締役について行われた場合には、代表取締役の改選も必要になり、

定時株主総会の流れで開催される取締役会で代表取締役が選定されるのが一般的。

 

役員報酬の支給決議と法人税務

 

向こう一年間の役員報酬の金額は、株主総会の決議を経て定めることを会社法では規定。

 

この会社法の規定を受けて、法人税法においても役員給与の損金算入に関する定め

(定期同額給与、事前確定届出給与等)が設けられていて、

定時株主総会での役員報酬の支給決議が役員給与の損金算入の形式的要件。

 

その上で「事前確定届出給与」とは、

所定の時期に確定額を支給する旨を事前に税務署に届け出ることによって

損金算入が認められるというもので、この届出については一定の期限が設けられている。

 

4  定時株主総会議事録の作成

 

株主総会議事録の作成にあたっては、市販の法令様式やひな形を参照。

また、前述の事前確定届出給与の届出には、

株主総会議事録(支給決議の仕方によっては取締役会議事録等も)

の写しを添付するのが一般的。

 

給与支払者の元で行なう定額減税の事務

 

給与を支払う企業等(源泉徴収義務者)が行なう定額減税への対応が、

本年61日以後に支払う給与計算から必要。

 

1 同一生計配偶者の把握の難しさに対応した新様式が公表に

 

定額減税のうち給与所得者に対しては、

その給与の支払者のもとで扶養控除等申告書を提出している給与所得者(いわゆる甲欄適用者)に対して、

その給与等を支払う際に源泉徴収税額から定額減税額を控除。

 

そこで、給与の支払者は、

➀年61日以後に支払う給与等に対する源泉徴収税額から、

その時点の定額減税額を控除する事務(月次減税事務)と、

②年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき

精算を行なう事務(年調減税事務)の二つの事務。

 

所得税の定額減税(3万円)は、

納税者本人だけでなく同一生計配偶者や扶養親族分も減税額に加算することになっているが、

最初の月次減税事務を行なうときまでに提出された扶養控除等申告書等により、

同一生計配偶者の有無と扶養親族の人数を把握するところ、

これらの者の一部は過去の税制改正によって源泉徴収義務者側で把握が難しくなっている。

 

その一例としては、

納税者本人の合計所得金額の見積額が900万円超の場合、

同一生計配偶者であっても扶養控除等申告書に氏名等の記載がないことが挙げられる。

 

そこで、こうした把握の難しさに対応をするため、

国税庁は「令和6年分年末調整に係る定額減税のための申告書」を新設し、

前述の同一生計配偶者分は、原則として年末調整で定額減税を行なうこととしつつ、

月次減税を受けたい場合は、

同じく新設の「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」を、

61日以後最初の給与支払日までに提出。

 

また、扶養控除等申告書に所得税に関する記載のない15歳以下の扶養親族も

「源泉徴収に係る申告書」の提出を求めて月次減税の対象に加えることとしつつも、

扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」を参照して計算。

 

2     月次減税事務には各人別控除事績簿の活用を

 

給与の支払者が行なう月次減税事務は

本年6月から始まりますが、その事務は、

➀定額減税額の控除対象者の確認、

各人別控除事績簿の作成、

③月次減税額の計算、

④給与等支払時の控除、

控除後の事務の手順で実施します。

このうち国税庁はの「各人別控除事績簿」の様式を公表し、

併せてそのExcel版も同庁HPにおいて公開。

 

各人別控除事績簿では、

61日在籍者の氏名、同一生計配偶者と扶養親族の数を記載するほか、

各月の控除前税額と控除した金額、控除しきれなかった残額を記載する専用欄が設けられている。

月次減税ではこの残額がなくなるまで繰り返すものとし令和612月がその最終。

 

国税庁HP 定額減税に係る様式公開のページ

https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/yoshiki.htm

 

なお、定額減税の実務は、ページの「実務担当者のための77答」も併せて参照。

 

中小企業向け賃上げ促進税制の概要

 

今和6年度税制改正では、従来の賃上げ促進税制の改正を行なう。

 

税額控除率の上乗せ措置の拡充等について 

 

・教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置は、

教育訓練費額の比較教育訓練費額に対する増加割合が5%以上であり、

かつ、教育訓練費額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に、税額控除率に10%を加算する措置。 

・当期が「プラチナくるみん認定」もしくは「プラチナえるぼし認定」を受けている事業年度

または「くるみん認定」もしくは「えるぼし認定(2段階目以上)」を受けた事業年度である場合に、

税額控除率に5%を加算する措置を本制度に加えた。

 

 

1 あらたな中小企業向けの措置はこうなる

 

中小企業(青色申告書を提出する資本金1億円以下の法人等)向けについて、

従来の賃上げ要件・控除率を維持しつつ、新たに繰越控除制度を創設し、

これまで本税制を活用できなかった赤字企業に対しても賃上げのチャレンジを後押し。

 

また、教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置については、

教育訓練費の増加割合が5%以上である場合に適用できるように緩和され、

くるみんやえるぼし(2段階目以上)の認定を受けた場合は、

税額控除率に5%を加算する措置が加えられた。

 

2 赤字企業の賃上げに資する繰越税額控除制度が創設

 

教育訓練費に係る上乗せ措置の要件の緩和等のほか、

令和641日以後開始事業年度において、

同税制を適用しても控除しきれない金額を5年間繰り越せる「繰越税額控除制度」が創設。

 

この繰越税額控除制度の創設により、

赤字であったり、黒字が十分でない中小企業でも、

賃上げ促進税制の恩恵が受けられる。

ただし、同制度を適用するには、中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件を満たす事業年度以後、

継続して「繰越税額控除限度超過額の明細書」を提出する必要。

 

具体的には、中小企業向け賃上げ進税制の適用要件を満たすX年において、

中小企業者等税額控除限度額(控除対象雇用者給与等支給増加額×税額控除率)について、

控除ができない場合や、控除をしてもなお控除しきれない金額がある場合

(繰越税額控除限度超過額がある場合)に、その繰越税額控除限度超過額の5年間の繰越しが認められる。

 

その上で、繰越税額控除制度を適用するには、

繰越税額控除をする事業年度において

雇用者給与等支給額がその比較雇用者給与等支給額を超えることが要件。

(繰越をしている途中の赤字事業年度での賃上げの要件は課されない)

 

また、繰越税額控除制度を適用する場合の申告の手続きは、

➀同税制の適要件を満たすX事業年度の確定申告書に、

「別表六(二十六)給与等の支給額が増加した場合の

法人税額の特別控除に関する明細書(現行)」と

「繰越税額控除限度超過額の明細書(新設)」を添付して申告する、

その後、赤字の各事業年度の確定申告書に

「繰越税額控除限度超過額の明細書」を添付して申告し続ける、

③その後の黒字化した事業年度で、

雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支額を超えることを要件に、

確定申告書に「控除の対象となる繰越税額控除限度超過額、

控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類(新設)」を添付。

 

3 教育訓練費の額に最低額が設定された

 

令和6年度税制改正では、

教育訓練費が前年度の水準を一定程度上回っていれば利用できた税額控除率の上乗せ措置について、

教育訓練費の額に最低額が設けられることになった。(教育訓練費額が雇用者給与等支給額の0.05%以上)

 

これにより、これまで前事業年度の教育訓練費の額が零であった場合には、

適用年度の教育訓練費の額が1円以上であれば

教育訓練費の増加率要件を満たすものとされていたが、

こうした要件の充足が不可能。

 

4 人材投資や働きやすい職場づくりへのインセンティブも

 

今般の賃上げ促進税制では「くるみん」「えるぼし」の制度が盛り込まれている。

 

雇用の環境を改善するため、

人材投資や働きやすい職場づくりへのインセンティブも付与するとの趣旨で、

子育てと仕事の両立支援や女性活躍の推進の取組みに積極的な企業に対しては、

その取組みに係る厚生労働大臣の認定制度(「くるみん」、「えるぼし」)を活用して、

控除率の上乗せ措置を講ずる。

 

どちらの認定制度も、その認定基準の全容を理解することは容易ではありませんが、

認定自体は事業主の申請に基づいて厚生労働大臣が行なうものであり、

なおかつ、認定企業については公表。